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「カウンセリングを受ける=弱い人」という図式

カウンセラー(臨床心理士)という仕事についてから、この図式が、まだまだ多くの人に根強いんだな~、という事を、たびたび痛感してきました。特に日本人男性、あるいは、いわゆる「体育会系」で育ってきた方の中に、この図式が強い印象があります。

 

様々な職場でカウンセリングをしてきましたが、タイトルの図式がどうしても気になって、カウンセリングへの強い抵抗になり、より問題が大きくこじれてから、来室される、という方がけっこうおられますね。

 

 

しかし、このタイトルの図式‥本当にどうにかならないかな~と思いますね。あるいは、この図式を変えるにはどうすればいいのかな~と、折に触れて考えます。

 

上記にも書いたように、特に日本人男性や、体育会で育ってきた方は「うじうじするな・悩むんだったら動け・人に頼るな、甘えるな(そういう奴は弱い奴だ)・結局やるのは自分だ‥」、といった図式を過剰に抱えている印象があります(もちろん、すべての人ではありません)。

 

より正確に表現すれば、そういった風潮・文化の中で育ってくると、気づかないうちに、自分の中にその図式ができあがり、それに支配される状態になっている、ということです。どうしても「カウンセリングを受ける=弱い、甘える」となって、なかなかカウンセリングに来づらいようなんですよね。

 

で、強い悩みや問題を抱えている方が、その図式に支配され、一人で悩みを抱え込んでいくと、「今、自分がどういった悩みをどの程度抱えているのか。自分の心身が、ほんとうのところ、どの程度悲鳴をあげているのか、まずい状態になっているのか‥」がわからなくなるんですよね感覚が麻痺してくるわけです

 

そういった方と、何度もお会いする経験をしていくと、繰り返しますが、先ほどから書いている「カウンセリングを受ける=弱い人」という図式が、どうにかならないかな~と強く思うんです。本当に超難問ですが。

 

今のところ、私が「個人的」に、もっとも説得力を感じる答えは、私が参考にしている、諸先生方が言っている「何かのタイミングで、不幸・不運な出来事が重なったり、続いたら、誰もが、かかりうるものだよ(この場合は、何らかの精神的な病気の事を言っています)」という言葉です。

 

これは、本当にそう思います。私も、何かのきっかけで、しんどい事や不運が重なったら、精神的な病状が生じても不思議ではない‥と実感をもって感じます。実際、医療機関でけっこう多くの患者さんが「まさか、私みたいな(強い・元気な)人間がなるなんて‥」という事を仰っていましたね。

 

つまり、「精神的な病気になったり、自分一人では処理できない大きな悩み」を抱える可能性は、誰にでも普通にあること」なんです。そうなる人が、「特に弱いから」、ではないんです。別の言い方をすれば、「精神的な病気になったり、自分一人では処理できない大きな悩み」を抱える人を、仮に、「弱い人」と呼ぶなら、私は、それをネガティブに捉えるのではなく、「人間ってそういうもんだよね」、とごく自然なことと捉えています。

 

この仕事をしていて思うのは、自分も含めて、“人間って、そんなに強い生き物ではないよな~”という事です。人生、逆風の時もありますし、しかも、その逆風が突然来たら、“そりゃ~精神のバランスを崩しうるよな~”と思うんです。そういった事を、多くの方が「自分にも生じうる事」と捉え、広まっていくと、タイトルの図式が変わっていくと思うんです。

 

私からみれば、「自分一人では処理できない大きな悩み」を抱え始めた時に、それを自覚し(つまり感覚を麻痺させずに)、それに対処するために、カウンセリングを利用したり、頼ったりする能力は、自分の心身を守るための、大事な能力です。

 

そういった認識が広がっていけば、カウンセリング等への敷居が下がるでしょうし、結果的に多くの方の心の健康の予防・改善にも繋がると思います。私も、このブログを含めて、様々な場面・SNS等で、そういった、啓蒙・啓発活動も、微力ながらやっていきたいと考えています。