『学校に行きたくない君へ』

今回は一冊の本をご紹介したいと思います。

 

学校に行きたくない君へ』 ポプラ社 2018年8月

 

偶然新聞で知って興味をもって買いました。

 

内容・形式を簡単に言いますと、不登校やひきこもりなどに関するインタビューを、様々な著名人にしていく、というものです。

 

この本の、ユニークなところは、インタビューする方が、全員、不登校・ひきこもりの当事者、あるいは経験者で、その方が、「私が話を聞きたい人に、私が話を聞きたくて、私が救われるために、取材に行く」というコンセプトで作られているところです。「世のため、人のため」ではないんですね。

 

ですから、質問が、「普通だったらここまでは突っ込んで聞かないだろう、当事者でないと、でてこないだろう‥」と思う質問があったりして、とても「リアル」な感触が伝わってきます。そこがこの本の魅力の一つだと思います。

 

また、話題は「不登校・ひきこもり」だけに限らず、「人はどう生きるか、人生をどんなふうにとらえ、悩みや生きづらさに、どう処していくか」、といった事をめぐるやりとりが展開されていて、様々な方に意味を持つ本だと思います。

 

更に、インタビューを受けた著名人が、20名いるんですが、実にバラエティにとんでいます。

例えば

・樹木希林さん

・柴田元幸さん

・リリー・フランキーさん

・羽生善治さん

・田口トモロヲさん

・西原理恵子さん

等々。

 

ですので、インタビューをされた側の意見、考えには、実に様々なものがあります。その中には正直、?と首をかしげたくなるものもあります。でも、こういったタイプの本は、それが良いのだと思います。

 

というのも不登校やひきこもり、と一口にいっても、その背景や実情は様々です。「こうすればいい・これが正解」といったものはありません。あるとすれば、「その当事者」にとっての正解だったり、ヒントだったりするはずです。

 

だとすると、様々に異なる不登校やひきこもりの当事者の方に役立つ本とは、様々に異なる意見や考えに触れ、その中から「今の・当面の自分」に役立つものを見いだしうるものなんだと思います。そういった意味で、この本は20人もの、実に多様な考え方や生き方、人生や悩み等の捉え方に触れることができるので、意味のある本だと思います。

 

不登校やひきこもり、といった一筋縄ではいかない問題に対処する時に、当事者の方やその関係者の方が、「世の中には色々な人がいて、色々な生き方があり、色々な考え方があるんだ」、といった多様性に触れるのは、やはり大切だと思います。

 

そのような想いから、今回は『学校に行きたくない君へ』をご紹介させていただきました。