大きな害を与えない

今回は、私がカウンセリングをするにあたって、重視している事の一つを書きたいと思います。それが、タイトルの「大きな害を与えない」です。

 

当たり前だろ?と思われる方も多いでしょうし、また、実際に当たり前の事なんですが、私は、カウンセラー(臨床心理士)としての、教育や訓練を受けてくる中で、この事は、とても重視されていました。

 

それは、カウンセリング・カウンセラーという職業は、人の「心」や「悩み・生きづらさ」に触れていく職業である以上、常に「大きな害を与える可能性」があり、そこに対する「注意・配慮」を怠ってはならないからです。

 

大きな害とは、例えば、下記のようなものです。

 

・強引なやり方で、悩みを暴露させようとする。いわゆる、土足で心に踏み込んでくる。

・自分の能力の限界がわからずに、カウンセリングを引き受ける。例えば、明らかに医療機関を紹介すべきなのに、紹介しない、など。

・宗教等で生じうる、教祖と信者のような、絶対的主従関係を作っていこうとする。こうなると、相談者の方は、カウンセラーに、異論や反論を言えなくなります。

・相談者の方が、カウンセリングを終わりにしたいと思っているのに、「やめたら(悩みやしんどさが)再燃するよ」など、不安を煽って、強引にカウンセリングに来させようとする。

 

これらは、大きな害を相談者の方に与えていきます。で、もっともまずいのは、上記の様ことを、カウンセラーが「自覚なしに」あるいは「善意で」やっている場合ですね。こうなると、カウンセリングはかなり危険なものになっていきます。「善意」でやっていると思っている時、人は自分の行為を、振り返ったりしにくいものですから。

 

一方、私も人間なので、正直に申し上げれば、多少のミスをする事があります。例えば、ピントがずれた事を言って、相談者の方に違和感を与えたり。で、こういった時に大事なのは、そういったミスをした時に、相談者の方が私に対して、「その発言はピンとこないですね~・納得できませんね」といった、異論・反論を「表現できる関係性」を作っておくことですね。

 

この関係性は、主従関係ではありません。ですが、相談者の方に「異論・反論」が生じているのに、カウンセラーに「気をつかって」、それが「表現できない」としたら、おそらくそのカウンセリングでは、効果は生じないでしょう。

 

また、大きな害を与えないように注意しながら、カウンセラーがプロとしての傾聴の技術を使いつつ、お話を伺っていけば、それだけで悩みや問題が解決に向かっていく場合もあります。なぜなら、そういった状況下では、いわゆる「自然治癒力」が働きやすいからです。

 

以上のように様々な理由から、私は「大きな害を与えない」を常に念頭におきながら、カウンセリングをおこなっています。世の中のカウンセリング機関などのホームページをみると、「~を受ければ、すぐに~ができる」「~で人生が劇的に変わる」などの派手な宣伝文句に溢れていますね。

 

ですが、本来カウンセリングという、人の心の悩みや痛みにふれていく営みでは、まずは「大きな害を与えない」という「デリケートさ、慎重さ、注意深さ」がベースにくるべきだと考えています。そこをベースにしながら、クライエントさんが少しずつ「安全に着実に」変化していけるような、何かをしていく。それが当オフィスで目指しているカウンセリングです。