WAIS‐Ⅳ知能検査の活用

公開日:2023/03/11

 

目次 

  1. はじめに
  2. WAIS-Ⅳについて
  3. 知能検査の役立て方
  4. まとめ

 

文責 福田 優菜

 

 

1.はじめに

 

2022年11月から、浦和南カウンセリングオフィス(以下、当オフィス)でWAIS-Ⅳ知能検査を実施できるようになりました。今回のブログでは、WAIS-Ⅳ知能検査に関する簡単な説明と、それが具体的にどんな方にお役に立てるのか…といったことについて解説してみたいと思います。

 

なお、WAIS-Ⅳ知能検査に関する説明は、「知能検査」ページにも記載してありますので、そちらもご覧ください。

 

2.WAIS-Ⅳについて

 

WAISは知能検査の一つで、主に精神科の医療機関で実施されている知能検査です(※5歳~16歳までの子供を対象にしたWISC-Ⅴは医療機関に加えて、自治体の教育センターや児童相談所で実施されることもあります)。精神科では医師の診察に加えて、知能検査の結果を診断や今後の方針を決めていく際の参考に活用しています。

 

よく誤解されることの一つですが、WAISの結果だけで障害や病気を診断できるというものではありません。診断をつけるためには、成育歴(これまでどうやって生きてきたか)、現病歴(現在の困りごとが生じた時期やその後の経過)、症状(具体的にどんな症状で困っているか)、などを十分聴き取った上で、必要があれば知能検査の結果も参考に医師が診断をつけていきます。

 

念のために付言しますが、臨床心理士・公認心理師などのカウンセラーは診断はできません。

 

知能検査では、クライエントさんの困りごとの背景に知的発達の遅れや偏りがないか、あるとしたらどの能力が弱くどの能力が高いのかなどを把握することができます。

 

そして知的発達になんらかの偏りや遅れがありそれが生活を困難にしている場合、それを補うためにどんな手段があるのか、周りからどんなサポートがあるといいのか(様々な医療・福祉サービスの利用を含む)等を考えていくことになります。

 

例えば成人の方であれば、就職を考える際に障碍者雇用を視野に入れるのか、一般雇用にするのかという選択の際の参考になります。もしくは、現在の職場内で配慮をお願いするとしたらどういった点に留意すると良いかを考えるヒントにもなり得ると思います。

 

なお当然のことですが、障害があっても一般雇用で働いている方は大勢おられます。ただ障害の中身や程度によって職務上の困難や負担が大きい場合、障碍者雇用の方が周囲からの理解とサポートを得られやすいというメリットがあります。もちろんこのあたりは、クライエントさんの希望を聞きながら話をすすめていくことになります。

 

3.知能検査の役立て方

 

当オフィスは医療機関 ではないので、WAIS-Ⅳ知能検査を実施しても診断をつけることはできません。そのため、病気や障害の診断とその後の公的支援や医療支援 (障碍者手帳の取得、障碍者雇用の検討、服薬など)をご希望の場合は、医療機関にご相談いただくことをお勧めします。

 

それでは下記に当オフィスでWAISをどのように生かせるかに関して具体的に述べていきたいと思います。

当オフィスでは、生活上の困りごとや生きづらさの背景に知的能力の遅れや偏りがあるかもしれないと思われる方、そのような疑問や生きづらさをズーっともたれてきた方、そのような問題への対処法を探したいと思われる方にお役に立てると思います。

 

例えば、下記のような困りごとや生きづらさの背景に知的能力の問題が存在している可能性があります。

 

仕事に関する悩み 

  • うっかりミスが頻発したり、仕事を覚えられなかったりして上司に毎回叱責されている。例:「何度言ったらわかるんだ」「この前も同じことを言ったでしょ」「やる気あるの」
  • 周りと同じ量の仕事をしていても時間がかかってしまい毎日残業が続いている
  • 不得意な業務ばかりやらされている気がして、仕事に行くのが苦痛 

 

もちろん上記のような問題に知的な問題が関係していない場合もあります。ですが関係している場合は、職場内での配置換えや転職を考えたり、あるいは何らかの個人的対策を考えるにしても、その点を踏まえた対応をとることが望ましいでしょう。そうでないと、環境が変わったとしても同様のことが起こってしまう可能性があります。

 

逆に言いますと、環境や状況が変わっても同様の困りごとが繰り返し起こっている場合、得意不得意の凹凸など知的能力の問題が要因の一つとなっている可能性を考慮しても良いかもしれません。

 

プライベートでの悩み

 

プライベート場面で困ることが続いている、ということもあります。よく耳にする話だと

  • 料理(複数の料理を同時進行で作るのが難しい、何から手を付ければ良いのかわからない)
  • 子育て(子供の学校に必要なものを準備をするのが難しい)
  • 予定管理(予定を忘れてしまう、ダブルブッキングしてしまう、待ち合わせに間に合わないことが多い)
  • 片付け(すぐに散らかってしまう、片づけ方がわからない)
  • 対人関係(言った言わないのトラブルが多い、言いたいことが相手に伝わりにくい)
  • 忘れ物失くしもの、公共料金などの支払い忘れが多い 

 

などがあります。こういったことは誰にでも起こり得ますし、疲労や寝不足だと余計に起こりやすくなります。ただ、あまりにもそれが頻繁で生きづらさへとつながっている場合は、知的能力の偏り(日常生活では得意不得意という実感になっているかもしれません)という視点から考えてみるのも良いと思います。

 

なお、仕事とプライベート、という形で一応分けて書きましたが、当然どちらにもでてくる悩みもあります。

 

4.まとめ

 

大事なことは、ご自身の得意不得意を含めた知的能力の特徴を把握することによって、必要な対策や適切なサポートを見出していくことだと思います。今回のブログで取り上げたようなしんどさを抱えておられる方がおられましたら、知能検査を受けることでお役に立てることがあるかもしれません。ご関心のある方は、「知能検査」ページからお気軽にお問い合わせください。

 

次回のブログでは、検査結果をどのように活用できるのかということを、具体的にご紹介できればと思います。