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楽しいことも疲れる

公開日:2017/04/03

更新日:2021/02/04

 

 

目次

  1. カウンセリングの体験から
  2. 気分転換と休息のちがい
  3. 楽しいと疲れを感じづらい
  4. 気分転換と休息のバランス
  5. 参考文献(精神医学関連)

 

1.カウンセリングの体験から

 

これまでカウンセリングのなかで、「楽しいことも疲れるんですよ。やり過ぎると調子を崩しますよ」といったことを伝えると、わりと多くのクライエントさんに驚かれつつ、「役にたった」と言われることがありました。今回のブログではそのあたりを詳しく書いてみたいと思います。

 

2.気分転換と休息のちがい

 

まず大事なこととして、「気分転換」と「休息」の違いを述べたいと思います。気分転換は、何かを「する」ことです。何かをするという事は、そこで一定のエネルギーや体力が使われる、ということで、そこには「一定の疲れ」が発生します。

 

例えば、「ジョギング,ウォーキング,読書,ドラマを見る」などは、一般的な気分転換だと思います。よく考えれば当たり前ですが、それらの気分転換を行えば、体力やエネルギーを一定程度消費しますよね。端的に言えば疲れがでるわけです。それを本人が自覚するかどうかは別として。

 

もっと具体的に説明しますと、例えば、サッカーをするのがすごく好きな会社員の方がいるとします。仮に週5日勤務の会社員の方が休日の二日間、ひたすらテンション高く楽しくサッカーをする生活を続けていったらどうなるでしょうか。おそらく徐々に疲労が蓄積し、場合によっては心身の状態を崩すことも生じてきます。

 

一方「休息」は、基本的には「横になる・寝る」といった行動です。心身を休めて疲れをとる、体力やエネルギーを充電する行為です。何かをおこない、それによって体力やエネルギーを消費し一定の疲れが発生する、という行為では原則的にはありません。

  

3.楽しいと疲れを感じづらい

 

多くの方は仕事や人間関係において、「本当はしたくないけど‥会いたくないけど‥ま~しょうがない」と思いつつ何かをする事に関しては、「それは疲れる‥ストレスになる」と理解しています。

 

一方、気分転換は基本的には「楽しさ」を感じる行為ですし、巷でも心身の健康のために「気分転換は必要だ」とも言われています。ひょっとすると多くの方の中に、「楽しいこと≒気分転換≒良いこと」といった図式が「ひそかに無条件に」醸成されているのかもしれません。

 

こうなると、「楽しいことや気分転換もやりすぎると心身の負担になるし、場合によっては調子を崩しうる」という発想が、そもそもわきづらいのかもしれません。あるいは仮にそのような発想があっても、「楽しい」ことは、まさにその方にとって「楽しいこと」なので、疲れを感じとりづらく、時としてやり過ぎてしまう、ということが往々にして生じやすくなります。

 

4.気分転換と休息のバランス

 

これまで述べてきたことをまとめると、下記の2点だと思います。

  1. 楽しさを含む気分転換は、なにかをすることなので、やりすぎると疲労を蓄積させ心身の調子を崩す原因となりえる
  2. 楽しいことは往々にして楽しいがゆえに、気づかないうちにやり過ぎてしまうことが多い

 

ここは是非、心に留めておいていただきたいと思います。私がここを強調するのは、楽しいことをし過ぎて疲れてしまって調子を崩す‥という方との出会いが多かったからです。彼らの多くが、「楽しいことも疲れるんですよ」といった上記の観点を伝えると強く驚いていました。

 

人間の心身がほど良い状態を維持するには、「楽しいこと・気分転換」と「休息」のバランスが大事です。バランスの割合はその方の性質や置かれた状況によっても異なりますが、私は、大雑把に言いますと、週休二日の方には、少なくとも一日は「休息」をベースにした生活をするようお伝えしています。

 

今回の記事が皆さまの心身の健康の維持に少しでもお役に立てれば幸いです。 

 

5.参考文献(精神医学関連)

  •  『看護のための精神医学 第2版』 中井久夫 山口直彦 医学書院 2004

【執筆者】

  • 西野入 篤
  • 資格:臨床心理士、公認心理師
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本心理療法統合学会
  • 経歴:大学院修了後、精神科医療機関,大学の学生相談室などをへて、現在は浦和南カウンセリングオフィス代表。カウンセリング経験,臨床経験は約20年。詳しくは「カウンセラー・顧問

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