公開日:2017/04/15
更新日:2021/08/01
目次
1.退く勇気
浦和南カウンセリングオフィスのブログでこれまで様々な形で紹介をしてきた精神科医師の中井久夫先生が、精神的健康を維持するための標語のようなものとして「めめしいようでも引き返そう」ということを述べています。
これは、いわゆる体育会的な価値観を醸成されてきた方や「潔い」という価値観や美意識に重きをおかれる方、あるいは「一度決めたら最後まで‥」といった価値観が強い方には、異論がでるかもしれません。
たしかに人生の中には、ある程度「踏ん張らないといけない時期や局面」「踏ん張る力」も必要でしょう。この力が大きく不足しているために人生がしんどい方向にいかれる方もおられます。
一方、“どうも変だ‥これをこのまま続けていたらまずい事になりそうだ‥”といった、嫌な予感や感触があるのに、途中でやめるのはめめしいと思って、あるいは「周囲からそう思われると感じて」無理にそれを続けると、心身の健康が損なわれる方向にいきうるのも事実です。人生の中には退く勇気が重要になる局面もあるのだと思います。
2.恥について
また、上記のような局面では“めめしい”といった言葉に代表されるような感情や気分が生じてくる可能性が高いのですが、これは一般的には「恥」と言われるものの一つだと思います。私などは「男のくせに‥」と言われたり、“相手はそう思っているだろうな~”といった考えや気持ちがわいてくると、恥とよばれるものが生じてきます。
今回は詳しくはとりあげられませんが、この恥という感情はその当人を無意識的に強く突き動かす力をもっているので、カウンセリングではそこを丁寧にみていくことがあります。
めめしいようでも引き返す。
時折思いだしてもらえればと思います。
3.精神医療系参考文献と関連ブログ
- 『こんなとき私はどうしてきたか』中井久夫 2007 医学書院
- 精神科医 中井久夫の言葉