· 

自己啓発セミナーについて:読者のリクエストへのお返事

今回は、読者の方のご要望により、いわゆる「自己啓発セミナー」について書いてみたいと思います。私の専門とは言えないのですが、少しでもお役にたてれば幸いです。なお、具体的にどういったご質問だったかを知りたい方は、6月4日の、「ブログの素材を募集いたします!」のコメント欄にある、EKさんの質問をお読みください。

 

どういったものが「良いのか」という観点で書こうとすると、話しが拡散しそうなので、「こういったセミナーはリスクが高いと思う」といったものを書いていきます。

 

1:お金が高い。これは、もうそのままですね。具体的には参加される方の収入にもよるでしょうが、どう考えても「日常生活に支障がでない」範囲の金額が妥当ですよね。食費など、ご自身の体調に直結するようなものを削らないと‥というような金額のものはリスクが高いと思います。

 

2:セミナーの主催者に権力が集中しすぎていて、疑問・異論をだせない。こういったセミナーもリスクが高いでしょう。わりとある事らしいですが、セミナーの主催者や講師の先生に、疑問や異論をだした時に「セミナーに参加して、あなたがもっと成長すればわかる・まだ成長が足りないからわからないんだ」的な応答をされると、疑問や異論をだす事自体が、自分の未熟さをさらす事‥といったロジックに絡み取られていくので、そうなっていくと、最終的に自分の頭で色々な事を考える事自体を否定されていくので、かなりまずい状態になっていきます。

 

3:「このセミナーを受けると、生き方ががらりと変わる・悩みが消える」といった、ある種の美辞麗句をうたい文句にしているセミナーも私には疑問です。臨床心理士という仕事をしていて思うのは、悩みや抱えている問題が大きければ大きいほど、そういったものは簡単には消えないですし、一朝一夕には解決しません。

 

 簡単に消えるような悩みであれば、わざわざお金を払って、自己啓発セミナーにいこうとは思わないですよね。やはりなんらかの重い悩みや問題を抱えているから、そういった方向に目がいくわけです。私には、そういった深い悩みが、何らかのセミナーを受けたら、完全に消える・生き方がガラッと変わる‥とは、ちょっと思えないんですよね。

 

 私も、このオフィスのHPに「私のカウンセリングを受ければ絶対に悩みが解決します」、と書いた方が宣伝になるのかもしれませんが、そういった事は軽々には言えないんですよね。なので、そういった「美辞麗句」をうたい文句にしているところもリスクが高いと思います。

 

4:勧誘の仕方が強引。こういうセミナーもリスクが高いでしょう。こういった場合は、辞めたい、となった時に、すんなりいかない可能性も高いです。いわゆる「ネズミ講」的な構造が背景にあるのかもしれないですしね。

 

最後に

①自己啓発セミナーにいこうと思うのは、「A:自分の生き方への迷いが生じたり、何らかの軽くない悩みがあり」それらを「B:どうにかしたい」からだと思うのです。どういった悩みをどの程度抱えておられるのかの自覚が、当人にあるかどうかは別として。

 

そして、「AからB」という道筋自体は、自然な事ですし、大事なものでもあるとも思います。ただ、A、Bが生じている時は、往々にして「情緒が不安定な時」ですから、時として、判断能力が落ちていたり、美辞麗句に引き寄せられて‥といった事も生じえます。特に年齢の若い方等はそうかもしれません。

 

②他にもリスクの高さを見極める要素は色々あるかと思いますが、ひとまず上記の観点も参考にしていただければと思います。また、ABが生じている時に、精神科・心療内科への受診、何らかの公的機関の相談窓口、臨床心理士によるカウンセリングなども選択肢としてご検討していただいてもよいかと思います。

 

特に、何か深刻な悩みや症状的なものはないけど、EKさんが仰るような、自分の事を知りたい、新たな自分と出会ってみたい‥といった欲求をお持ちの方の場合などは、最初は医療機関ではなく、臨床心理士によるカウンセリングの方が抵抗が少ないかもしれませんね。

コメント: 2 (ディスカッションは終了しました。)
  • #2

    西野入 篤 (木曜日, 06 7月 2017 09:35)

    EK様:お返事をいただきありがとうございました。
    びっくりしました。そういう事だったのですね。実際に勧誘されていたわけですね。

    ・3日で16万:ま~普通の感覚でいったら高いですよね。
    ・その方を通してでないと申込できない:ネズミ講の気配が濃厚ですね。
    ・熱烈なお誘い

    断定はできませんが、EKさんが誘いを受けていたセミナーはリスクが高いように個人的には感じますね。

    また、「二の足を踏む」のも、こういった類の事には大事なように思います。「二の足を踏む」というのは、ざっくり言えば、迷っている、葛藤を抱えているわけで、ある意味ではしんどい状態ですよね。特に本人が強いしんどさを抱えている場合には、その「しんどさ」+「行くかどうかの葛藤」という二重のしんどさを抱える事になりますから。で、こういう時って、人間って、葛藤を抱える、つまり二の足を踏んで色々考えるよりも、「思い切っていっちゃえ~」という方向に流れる場合がわりとあるんですよね。その瞬間は「行くかどうかの葛藤」が消えるので一瞬は楽になるんですが、今度はいったらいったで、実際にはまた別の葛藤が生じたりするわけですが‥。

    ともあれ、多少なりとも参考になったようで良かったです。私の方も色々と勉強になりました。ご返信をいただき、ありがとうございました。

  • #1

    EK (火曜日, 04 7月 2017 21:27)

    お答えくださりありがとうございました。

    実は知り合いに勧められていたセミナーがあって、それは書いてくださった上記すべてのリスク項目が当てはまっていました。驚くやら、怖くなるやら…
    勧誘されたものは3日で16万円だったのですよ!そしてすでに受講した人を通してでないと申し込めないシステムという、ネズミ講そのもの。

    相談して良かったです。二の足も踏んでみるものですね�

    悩んでいるときにタイムリーに声をかけてくるなんて、やはり「この人に今声をかければ参加するかも」と思わせるようなオーラを出していたのですかね。
    「すっごく良いセミナーなの!絶対行って良かったって思えるよっ!」という熱烈なお誘いでした。�

    そもそも3日で解決する悩みなら、大した悩みではないのかもしれませんね…